弁護士,司法書士,行政書士(以下「士業」といいます。)に,書面の作成のみを依頼することがあります。
その場合の費用について,通常の士業であれば,書面作成の労力に応じた手数料のみで依頼を受けると思います。
ところが,書面作成料だけで依頼を受かるべきところ,書面作成料のほかに「成果報酬」「成功報酬」と称して,書面作成に要した労力を大きく上回る報酬まで請求する士業がいます。
行政書士が書面作成料のほかに「成果報酬」を請求したケースについて,大阪高等裁判所平成26年6月12日判決(判例時報2252号61頁)は「成果報酬は,単なる書面作成の結果というよりは,行政書士による成果(それによって得られた経済的利益)に対する報酬であり,弁護士法72条違反」であり無効との趣旨の判断をしています。
最近,司法書士の職務範囲に関する最高裁判所の判決が出ました(平成28年6月27日第一小法廷判決)。
この事件の下級審である大阪高等裁判所平成26年5月29日判決は,司法書士が裁判書類作成関係業務の報酬として回収した金額の2割とする依頼者との合意が暴利行為として民法90条に反し無効なものであるか否かについて「司法書士の裁判書類作成関係業務は,委任者の主張を聴取した上で,これを法律的に整序して訴状その他の裁判所に提出する書類を作成するものであり,同業務における報酬は,この書類作成という事務処理における実働の対価であって,作成した書類を使用して過払金を回収したからといって,成功報酬として過払金の一部を受領すべき関係にはない。したがって,裁判書類作成関係業務の報酬として回収した過払金の2割とする合意は,暴利行為(民法90条)にあたり,または,裁判書類作成関係業務に名を借りて代理業務を行うことを想定した合意として弁護士法72条の趣旨を潜脱するものといえ,いずれにしても無効であると解するのが相当である」と判断しました。この判断に対して司法書士は上告受理の申し立てをしまいたが,最高裁判所はこれを受理しませんでした。
ある士業の書類作成業務が,書類作成という事務処理における実働の対価であり,「成果報酬」「成功報酬」を受領すべき関係になく,「裁判書類作成関係業務の報酬として回収した過払金の2割とする合意は,暴利行為(民法90条)にあたり,または,裁判書類作成関係業務に名を借りて代理業務を行うことを想定した合意として弁護士法72条の趣旨を潜脱するものといえ,いずれにしても無効」と判断された場合,
① まだ報酬を支払っていなければ,合意(契約)は無効であるとして,報酬の支払いを拒否することができ,
② すでに報酬を支払ってしまっている場合,その返還を求めることができ,
ることになります。
平成28年6月27日第一小法廷判決も,司法書士が弁護士法72条に反して代理行為を行い,依頼者から受領した報酬について,不法行為の成立を認め,依頼者から司法書士へ支払った報酬相当額の損害賠償請求を認めました。