1 非弁護士の法律事務の取扱いの禁止(非弁行為の禁止) 弁護士法72条は「弁護士又は弁護士法人でない者は,報酬を得る目的で訴訟事件,非訟事件及び審査請求,異議申立て,再審請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定,代理,仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い,又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし,この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は,この限りではない。」と規定しています。 この条文により,弁護士でない者が,業として法律事務を取り扱いことが禁止されています。この条文に違反する行為を,「非弁行為」と呼んでいます。

 

2 弁護士法72条の法意 最高裁判所昭和46年7月14日大法廷判決は,弁護士法72条の法意について,次のとおり判断しています。 「弁護士は,基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし,ひろく法律事務を行うことをその職務とするものであって,そのために弁護士法には厳格な資格要件が設けられ,かつ,その職務の誠実適正な遂行のため必要な規律に服すべきものとされるなど,諸般の措置が講ぜられているのであるが,世上には,このような資格もなく,なんらの規律にも服しない者が,みずからの利益のため,みだりに他人の法律事件に介入することを業とするような例もないではなく,これを放置するときは,当事者その他の関係人らの利益をそこね,法律生活の公正かつ円滑ないとなみを妨げ,ひいては法律秩序を害することになるので,同条は,かかる行為を禁圧するために設けられたものと考えられるのである。」

 

3 世の中には,弁護士資格を持っていなくても法律知識を持っている人がいるかもしれません。 しかし,最高裁判所が判断したとおり,そのような人がみだりに他人の法律事件に介入することを業とすると,当事者その他の利害関係者の利益をそこね,法律生活の公正かつ円滑な営みを妨げ,ひいては法律秩序を害することになるのです。 業として法律事件に介入したいのであれば,まずは,弁護士資格の取得を目指すべきなのです。

 

4 隣接仕業と非弁行為 法律事務を業として扱う資格に,司法書士,行政書士,社会保険労務士などがあります。彼らは,それぞれ法律によって限定された法律事務を行うことができます。弁護士法72条の「その他の法律」による例外にあたります。 「名は体を表す」ではないですが,それぞれの士業の名称は,それぞれの職務を端的に表現していました。しかし,現在では,その名称からは想像できない職務もそれぞれの仕業に認められてきています。 一般市民からは,どの士業が何をしてくれるのか,分かりにくい状況となってきています。 これらの士業も,その認められた職務の範囲を超えた法律事務を業として扱えば「非弁行為」となります。

 

5 すでに,行政書士については,別の投稿で裁判例に現れた非弁行為の例を紹介しました。 今後も,行政書士のみでなく,他の士業についても投稿していく予定です。 「この士業のこのような行為は非弁ですか。」とのご質問があればお寄せください。 個人のブログに不似合いな投稿と思われる方もいると思いますので,捕捉します。 私は埼玉弁護士会に所属し,同会内の弁護士業務対策委員会の委員長をしています。この委員会では,非弁問題も扱っているため,このような投稿をすることにしました。