1 A社から,取引先のB社が数百万円の売掛金を払わないとの相談を受けました。
2.3日前からB社と連絡が取れず,仕事もしていないようであるとのことでした。
A社は,B社がC社と取引をし,C社に対して数百万円の売掛金があるらしいことの情報も持っていました。
ただし,B社は,破産申し立てをするかもしれないとの不確かな情報も持っていました。
2 破産手続と債権回収
売掛金の法的な回収方法として通常考えられるのは,B社のC社に対する売掛金の「仮差押え⇒民事訴訟⇒強制執行」という流れです。
しかし,仮差押えが成功したとしても,その後にB社の破産手続開始決定があると,仮差押えの効力は失効してしまいます(破産法42条)。
3 A社には,B社が破産した場合の不利益についても説明し,それでも仮差押手続を実行するか否か確認しました。
A社は,B社が破産申し立てをしないかもしれないということで,仮差押手続を取ることを希望しました。
そこで,A社の従業員と協力して,数日のうちに仮差押手続に必要な資料を整えて申し立てをし,翌日には担当裁判官と面接して保証金額を決め,請求債権の約13パーセントの保証金を供託して,B社のC社に対する売掛金を,仮に差し押さえることに成功しました。
4 しかし,3週間後に,A社のもとへ裁判所からB社の破産手続開始決定の通知が届き,B社の破産管財人は,A社の仮差押手続を失効させる手続を取りました。
残念ながら,A社の仮差押えをしたC社に対する数百万円の売掛金は,B社の破産財団に組み入れられてしまいました。
5 それでは,B社の破産手続開始決定前にA社が債権の回収まで成功していたら,A社は回収した債権を確保していることができるでしょうか。
別稿「執行行為と否認権」にて説明することにいたします。